インボイス制度について~その4~Q&A
インボイス制度が今月より開始となりました。
そこで今回は、インボイス制度への対応について、よくあるQ&Aをご紹介します。
目次
-クレジットカードを利用した場合のインボイス対応-
Q.クレジットカード会社から受領する「クレジットカード利用明細書」を保存しておけば、消費税の仕入税額控除は出来ますか?
A.クレジットカードの利用によりクレジットカード会社から受領する「クレジットカード利用明細書」は、インボイスの記載事項を満たさないため、インボイスには該当しません。
そのため、クレジットカードの利用について消費税の仕入税額控除を受けるには、そのクレジットカードを利用した店舗等(売主)からインボイスとして交付を受けた領収書等の保存が必要となります。
(国税局質疑応答事例「カード会社からの請求明細書」より)
-タクシーを利用した場合のインボイス対応-
Q.タクシー料金を支払った場合のインボイス対応はどうなりますか?
A.インボイス発行事業者であるタクシーに支払ったタクシー料金は、そのインボイスの交付を受けることで消費税額の全額を控除出来ます。
一方、インボイス発行事業者ではないタクシーからはインボイスの交付は受けることは出来ませんが、インボイス発行事業者以外の者からの領収書等の交付をもって経過措置として消費税額の80%を控除出来ます(令和8年10月1日~令和11年9月30日までは50%、令和11年10月1日以後は全額控除不可)。
ただし、そのタクシー料金が、会社が従業員に対して出張旅費規程等に基づいて出張旅費として支給したものである場合には、金額に関係なく一定事項を記載した帳簿を保存することで、タクシー料金の消費税額の全額を控除出来ます。
なお、公共交通機関特例の3万円基準の適用は出来ません。
-出張で飛行機を利用した場合のインボイス対応-
Q.会社出張で飛行機を使用しました。この場合のインボイス対応はどうなりますか?
A.会社が従業員に対して出張旅費規程等に基づいて出張旅費として航空券代を支給した場合には、前述のタクシー料金と同様、金額に関係なく一定事項を記載した帳簿を保存することで、仕入税額控除が出来ます。
ただし、会社が直接航空券を購入した場合には、インボイスの保存が必要となります。
航空会社のウェブサイトや空港などで購入した場合、その領収書等にはインボイスの記載要件の1つである「資産の譲渡等の年月日(飛行機の搭乗日)」の記載がされないため領収書等に加えて、搭乗券や航空券といった搭乗日の記載のあるものを併せてインボイスとして保存する必要があります。
なお、公共交通機関特例の3万円基準の適用は出来ません。
さらに、海外出張(国際航空券)の場合、インボイスの有無にかかわらず航空券の代金に係る消費税は免税となるため、仕入税額控除の対象外となります。
-ETCを利用した場合のインボイス対応-
Q.高速道路の料金をETCクレジットカードで支払った場合のインボイス対応はどうなりますか?
A.ETCクレジットカード利用時の高速道路代金に係る消費税に仕入税額控除を適用するには、原則、利用者がウェブ上の「ETC利用紹介サービス(https://www.etc-meisai.jp/)」に登録をし、インボイスとしてその全ての高速道路利用分に係る「利用証明書」をダウンロードし保存する必要があります。
しかし、全ての高速道路の利用に係る「利用証明書」を取得・保存することが負担となるため、簡易的な方法として、クレジットカード会社から高速道路の利用内容が示された「クレジットカード利用明細書」(個々の高速道路利用に係る内容が判明するものに限る。取引日や取引内容、取引金額が分かる利用明細データ等を含む。)を受領ごとに保存し、「利用証明書」をその利用した高速道路会社等ごとに1回のみ取得し、併せて保存しておくことで仕入税額控除が認められます。
(例)東日本高速道路㈱を利用し、その任意の1回分の「利用証明書」を取得・保存しておけば、その後東日本高速道路㈱の高速道路を利用した際には、「利用証明書」を取得する必要はありません。
カードの種類 | インボイスとして保存するもの |
ETCクレジットカード |
全ての高速道路利用分に係る「利用証明書」 or クレジットカード会社から受領する「クレジットカード利用明細書」 + 利用した高速道路会社等の1回分の「利用証明書」 (「利用証明書」の取得は利用した高速道路会社等ごとに1回のみ) |
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ETCパーソナルカード | ETCパーソナルカード事務局から送付される請求書 |
ETCコーポレートカード | 高速道路会社等から送付される請求書 |
-JR新幹線等の乗車券等のインボイス対応-
Q.JR新幹線等の乗車券等に係るインボイスはどのように取得しますか?
A.JR新幹線等の乗車券等に係るインボイスは下図のように取得します。
種類 | 購入方法等 | インボイスの受領方法 |
乗車券・特急券 | 自動券売機・指定席券売機 | 自動券売機・指定席券売機から受領 |
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新幹線のウェブ予約サービス ①えきねっと ②エクスプレス予約及び スマートEX ③e5489(いいごよやく) |
各ウェブサイトでダウンロードして受領 | |
Suica利用 | 原則交付なし | |
定期券 | 自動券売機・指定席券売機 | 自動券売機・指定席券売機から受領 |
モバイルSuica | ウェブサイトでダウンロードして受領 | |
Suicaチャージ | 消費税の不課税取引のため交付なし |
-水道料金のインボイス対応-
Q.水道料金はどのようにインボイスを取得しますか?
A.水道料金では、水道の利用者に届く「検針票」をインボイスとする市町村が多いようです。「検針票」の他にコンビニ等での支払いに係る「納入通知書」や口座振替に係る「口座振替済通知書」などもインボイスとして交付されるケースもあります。よって、インボイスとして交付された上記のいずれかの書類を保存すれば済みますので、基本的には「検針票」をインボイスとして保存すると良いでしょう。
-国外事業者との取引のインボイス対応-
Q.国外事業者からの仕入れについて注意することはありますか?
A.インボイス発行事業者ではない国外事業者から受ける課税仕入れのうち、「消費者向け電気通信利用役務の提供」に係るものについては、インボイス発行事業者以外からの課税仕入れの経過措置(一定期間、仕入税額相当額の8割又は5割を仕入税額控除可)の対象外とされており、仕入税額控除を適用できません。
一方、インボイス制度が開始する令和5年10月1日以後、「登録国外事業者制度」が廃止されることに伴い、同年9月1日時点で登録国外事業者である国外事業者は、インボイス発行事業者に自動的に移行します。そのため、登録国外事業者からインボイス発行事業者に移行した国外事業者からの「消費者向け電気通信利用役務の提供」に係る課税仕入れについては、インボイスの交付を受けることで仕入税額控除を適用できます。
-インボイス登録通知が届くまでの対応-
Q.10月1日を過ぎてもインボイスの登録通知が届かない場合はどのように対応したらよいでしょうか?
A.インボイスの交付対応が必要となる令和5年10月1日を迎えても、インボイス発行事業者の登録申請をした売手にインボイスの登録通知が届かない場合、登録通知を受けた後に、買手に登録番号を知らせる等の事後的な対応を行えば大丈夫です。しかし、小売店など取引後に個別に登録番号を知らせる等の事後的な対応が困難な場合は、自社のHP等に登録番号を掲示等する対応をとることも可能です。
一方、買手としては、売手から事後的に受領等した登録番号のお知らせ等を保存することで仕入税額控除ができます。消費税の申告期限までに売手から登録番号のお知らせ等がない場合でも、事前に売手がインボイス発行事業者の登録を受ける旨を確認できていれば、後日、登録番号のお知らせ等の交付を受けて保存することを条件に、売手から受領した登録番号のない請求書等により仕入税額控除が可能です。
Q.新たに事業を始めましたが、インボイスの登録通知が届くまではどのように対応したらよいでしょうか?
A.新設した法人がインボイスの登録通知を受けるまでの対応についても、上記の令和5年10月1日までに登録通知が届いていない場合と同様に、登録通知を受けた後に、事後的に買手に登録番号を知らせる等の対応が可能です。
今回は、インボイス制度が開始されるにあたり、よくあるQ&Aについて紹介しました。
今回のケースの他にインボイスの取扱いについて、ご心配な点やご不明な点がある場合は、顧問税理士等の税務の専門家に相談することをオススメします。