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交際費の2024年税制改正について

昨今の物価上昇及び企業の経済活動の促進のため、2024年(令和6年)において交際費等の損金不算入の税制改正がありました。

そこで今回は、交際費等の損金不算入についての税制改正の内容と、インボイス制度で受ける影響や注意点などを解説します。

-1.交際費等の損金不算入とは?-

交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいいます。

法人が支払う交際費等の額は原則として、損金不算入(法人税法上の経費に算入できない)とされていますが、下記のとおり、法人の区分に応じて一定の金額を損金に算入することが認められています。(租税特別措置法61条の4)

法人の区分 期末資本金等の額 損金算入限度額
中小法人 1億円以下 次のうち大きい金額
・年800万円
・接待飲食費×50%
大法人 1億円超100億円以下 接待飲食費×50%
100億円超 なし(全額損金不算入)

-2.交際費等の範囲から除かれるもの-

下記の①~③に掲げる費用は交際費等からは除外されます。

  1. 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
    ⇒従業員の慰安のための費用は、福利厚生費となります。
  2. 社外の方との飲食その他これに類する行為のために要する費用であって、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が5,000円以下である費用
    (一人あたり5,000円以下であるかどうかの判定は、法人の適用している消費税等の経理処理(税抜又は税込)により算定した価額で行います。)
    ⇒下記の事項を記載した書類を保存している場合に限り、会議費等となります。
    • 飲食等のあった年月日
    • 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
    • 飲食等に参加した者の数
    • 飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称及び所在地(店舗がない等の理由で名称又は所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名又は名称、住所等)
    • その他飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項
  3. 下記に掲げるその他の費用
    • カレンダー、手帳、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
    • 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用
    • 新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、又は放送のために取材に通常要する費用

-3.2024年(令和6年)税制改正の内容-

① 接待飲食費の損金算入の特例の延長

上記1.の交際費等のうち、「年800万円まで」と「接待飲食費等×50%」の損金算入限度額が認められるのが2024年3月31日までに開始する事業年度までとされていましたが、2024年税制改正により3年延長され、2027年3月31日までに開始する事業年度まで認められることとなりました。

② 交際費等から除外される飲食費の上限額のUP

2024年(令和6年)4月1日以降、上記2.②の交際費等から除かれる1人当たり5,000円以下の飲食費の上限が5,000円以下から10,000円以下まで増えました。

-4.インボイス制度による交際費等から除外される飲食費への影響-

税抜経理を採用している事業者がインボイス発行事業者でない店で飲食等を行った場合、消費税の仕入税額控除の対象外となる部分も飲食代に含めなければならないため注意が必要です。

① インボイス発行事業者である飲食店で飲食等を行った場合

領収書をもとに税抜金額を参加人数で割って10,000円の判定を行います。

【例】

令和6年5月1日に5人で飲食をした。領収書には飲食代55,000円(適用税率10%)と記載あり。
55,000円 ÷ 5人 = 11,000円(税込)
11,000円 ÷ 1.1 = 10,000円(税抜) ≦ 10,000円

 よって、この飲食代55,000円は交際費には該当しない。

② インボイス発行事業者ではない飲食店で飲食等を行った場合

インボイス制度開始後は、支払金額に消費税はないものとされるため、領収書に消費税額が記載されていたとしても、原則、消費税額を飲食代に含めて総額を参加人数で割って10,000円の判定を行います。ただし、経過措置により、令和5年10月1日~令和8年9月30日までに行ったものは消費税額相当額の80%を、令和8年10月1日~令和11年9月30日までに行ったものは消費税額相当額の50%を仕入税額控除の対象とすることが出来ます。

つまり、令和5年10月1日~令和11年9月30日までの6年間は仕入税額控除の対象とならない部分(令和5年10月1日~令和8年9月30日までに行ったものは消費税額相当額の20%、令和8年10月1日~令和11年9月30日までに行ったものは消費税額相当額の50%)を飲食代に含めることとなります。

【例】

令和6年5月1日に5人で飲食をした。領収書には飲食代55,000円と記載あり。
  55,000円 ÷ 5人 = 11,000円(税込相当額)
11,000円 ÷ 1.1 = 10,000円(税抜相当額)
10,000円 × 10% = 1,000円(消費税相当額)
1,000円 × 20% = 200円(飲食代に含める金額)
10,000円 + 200円 = 10,200円 > 10,000円

 よって、この飲食代55,000円は交際費に該当する。

-5.令和6年4月以降の飲食費10,000円基準のボーダーライン-

令和6年4月1日以降に、インボイス発行事業者ではない飲食店で店内飲食(適用税率10%)を行った場合の10,000円基準のボーダーラインは表のとおりとなります。(1円未満端数切捨)

対象期間 ①税込相当額 ②税抜相当額
(①÷1.1)
③消費税相当額
(②×10%)
④飲食代に含める金額
(③×(100%-⑥))
⑤判定額
(②+④)
⑥経過措置割合
令和6年4月1日~
令和8年9月30日
10,785円 9,804円 980円 196円 10,000円 80%
令和8年10月1日~
令和11年9月30日
10,477円 9,524円 952円 476円 10,000円 50%
令和11年10月1日
10,000円 9,090円 909円 909円 9,999円 なし

-6.まとめ-

今回は交際費等の2024年税制改正について解説しました。

10,000円基準の改正は、交際費が全く損金にならない大企業をはじめ、多くの法人に恩恵がある改正だったと思います。
自社が消費税の税抜経理を採用している場合、飲食店がインボイス発行事業者か否かにより取り扱いが変わってくるので注意が必要です。
ご心配な点やご不明な点がある場合は、顧問税理士等の税務の専門家に相談することをオススメします。

【文責】ニース税理士法人
 シニアマネジャー
 税理士 髙瀬 明彦