自筆証書遺言の作成方法
目次
自筆証書遺言の作成方法
自分の最後の願いを託す遺言書。家族やお世話になった大切な人を守るためにも、遺言書を正しく作成し、準備しておくことをオススメします。
そこで、今回は自分自身で作成でき、手間も費用も比較的かからない自筆証書遺言書の作成方法をわかりやすくお伝えします。
以下の5つの要件を守ることで、法律的に無効にならない自筆証書遺言を作成することができます。
また、遺言書の正しい封印及び保管の方法も併せてご説明します。
1.遺言者が自筆で全文を書く(※ 添付の財産目録以外)
遺言者が自筆(手書き)で全文を書きます。 パソコンで作成したものや録音、録画、家族等による代筆は無効になります。
これは自筆の筆跡により、第三者による不正や偽造を防ぐためのものです。
自筆証書遺言を書くときの筆記具についての法的な定めはありませんが、長期保存のきくボールペンや万年筆等で書きましょう。
インクは油性等の消えにくい性質のもので、黒がオススメです。
(※法律が改正され、2019年1月13日からは相続財産の全部または一部の目録を添付する場合は、その目録については自筆ではなくパソコンで作成したものでも良いことになりました。また、通帳の写しや土地の登記事項証明書を添付することもできます。ただし、その財産目録の各ページに自筆の署名及び押印が必要です。)
2.作成した日付を正確に自筆で書く
遺言書を作成した日付を「令和4年9月1日」若しくは「2022年9月1日」等と正確に書きます。
遺言者の死後、複数の遺言書が残っていた場合、内容に相違があれば作成日付の一番新しいものが有効になります。
3.氏名を自筆で書く
戸籍上の氏名をフルネームで正確に書きます。
より正確に人物を特定するため、名前の前に生年月日、住所を入れるのが望ましいでしょう。
4.印鑑を押す
名前の後に印鑑を押します。 印鑑が不明瞭にならないよう、しっかりと押しましょう。
もし印影が消えてしまっていたり、印鑑がない場合は遺言書が無効になります。 印鑑は認印でも構いませんが、簡易な印鑑のインクは消えやすい場合があります。
長期間の保存に耐える実印と朱肉にするのがオススメです。
5.訂正には印を押し、欄外にどこを訂正したかを書いて署名する
訂正にも法で定めたやり方があります。それに沿って行いましょう。
民法968条では「自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない」とあります。
これを分かりやすく解説すると、下記のとおりとなります。
①訂正したい文字に取り消し線を引き、そのそばに正しい文字を書き、印鑑を押す。
②欄外の余白部分に、何文字削除し何文字追加したのかと自分の名前を書く。
もし、訂正事項が多くなってしまった場合には、新しく遺言書を書き直すことをオススメします。 以上、この5つの要件を守れば、あなたの作成した自筆証書遺言は法的に有効になります。
正しい封印及び保管方法
1.遺言書が複数枚になる場合
遺言書が複数になる場合の法的なルールはありませんが、以下のようにしておくのがオススメです。
こうすれば全体のつながりが証明でき、第三者の変造を防げるからです。
① ホチキスでまとめ、用紙の下部に「1/2」「2/2」等とページ数を自筆で書く。
② ページの境目に契印を押す。
2.封印方法
自筆証書遺言を入れる封筒についての法的な定めはありませんが、安全に遺言書を作成するため以下のようにしましょう。
① 遺言書をそのまま入る大きさ、あるいは二つ折り程度で入る大きさの封筒に入れる。
② 封筒の表に「遺言書」と自筆で書く。
③ 封筒をのり付けし、封筒のふたに割り印を押す。
④ 封筒の裏に遺言書を書いた日付及び「遺言者 ○○○○」と氏名を自筆で書き、印を押す。
3.保管方法
自筆証書遺言の保管について法的な定めはありません。 一般的には、自宅の安全な場所に保管します。このとき、あまりに複雑な所だと死後に発見されないこともありますし、誰でもわかりやすい所だと改ざんされてしまう恐れがあります。
銀行の貸金庫を利用するのもいいのですが、遺言者の死後に金庫を開ける場合は相続人全員の同意が必要等、かなり手続きが複雑になるため、下記の2つの方法をオススメします。
① 遺言者の死亡の連絡が必ず伝わる立場である、顧問税理士等の専門家に遺言書を預ける。
相続発生後は、預けた顧問税理士等の専門家の立会のもと家庭裁判所にて、開封のための検認の手続きを行います。
② 法務局で保管してもらう。(自筆証書遺言書保管制度の利用)
令和2年7月10日より、遺言者本人が封をしていない遺言書を法務局に持っていけば、保管の申請が行えるようになりました。
この制度を利用すると、遺言書の紛失や第三者による改ざんを防げるだけでなく、相続発生後の開封のための家庭裁判所での検認の手続きも不要になります。
このように自筆証書遺言は比較的手軽に作成することが出来ます。
病気等により自筆で遺言書を書くのが難しい場合や相続人が多く関係性が複雑(認知や排除がある)な場合等には、自筆証書遺言より公証役場で証人の立会のもと作成される公正証書遺言が向いています。 公証証書遺言にかかる料金や作成方法につきましては、お近くの公証役場にお問い合わせ下さい。
その他、遺言の書き方でわからない場合や確実に遺言を実行して欲しい場合には、顧問税理士等の法の専門家に相談することをオススメします。