What's New

新着情報

HOME > 全ての記事 > 税務コラム > 遺言書がある場合の相続の流れや注意点を詳しく解説!書く際のポイントも

遺言書がある場合の相続の流れや注意点を詳しく解説!書く際のポイントも

遺言書がある場合の相続の流れや注意点を詳しく解説!書く際のポイントも

相続を円滑に進めるための重要な書類が「遺言書」です。

被相続人(亡くなった方)が生前に遺言書を残していた場合、原則として遺産分割協議を経ずに手続きを進められるため、相続の手続きの時間と手間を大幅に削減できます。

 

しかし、遺言書の種類や内容によっては、「検認」手続きが必要になったり、「遺留分侵害額請求」によるトラブル(争続)のリスクが残ったりするケースも少なくありません。

 

この記事では、遺言書がある場合の相続の具体的な流れや、実務上の税務・法務に関する注意点、さらに税理士の視点から見た遺言書作成のポイントなどをわかりやすく解説します。

 

遺言書がある場合の相続の基本 

まず押さえておきたいのは、遺言書は法定相続よりも常に優先されるという点です。遺言書は、被相続人の最終意思として民法でその効力が強く尊重されます。

 

遺言書とは「法的な効力を持つ意思表示」

遺言書とは、被相続人が自分の死後の財産の分け方や、認知、祭祀承継者の指定などを法的に有効な形で記した文書です。

 

主な種類は次の3つです。

 

遺言書の種類

特徴

法的な安全性

検認の要否

公正証書遺言

公証人が作成し、公証役場に保管。最も確実な方法。

極めて高い

不要

自筆証書遺言

本人がすべて自筆で書く方法。(法務局が形式をチェックし保管もしてくれる法務局保管制度がある)

低い(形式不備のリスクあり、法務局保管制度を利用した場合は高い)

必要(法務局保管制度を利用した場合は不要)

秘密証書遺言

内容を秘密にしたまま作成する方法。署名以外はパソコンや代筆で作成可能。作成後、公証役場で公証人と証人による確認が必要。

低い

必要

 

法定相続との違いは「協議から執行への転換」

遺言書がない場合、法定相続人全員で遺産分割協議を行い、全員の合意がなければ手続きを進めることはできません。

 

一方、有効な遺言書がある場合は、原則として遺産分割協議は不要となり、遺言書に指定された遺言執行者が中心となって「執行」という形で手続きを進めることができます。これにより、相続人全員が揃わないことによる手続きの停滞を回避できます。

 

ただし、遺留分(配偶者や子などに最低限認められる財産の取り分)は侵害できません。

 

遺言書がある場合の相続の流れ

遺言書がある場合の相続の流れ

遺言書があると、検認や遺言執行者の活動といった特有のステップが入ります。

 

遺言書の有無・保管場所を確認する

まずは、遺言書の有無を確認します。自宅の金庫や貸金庫のほか、特に確認すべきは以下の方法です。

 

  • 公正証書遺言:公証役場に照会して検索します。

 

  • 法務局の遺言書保管制度を利用する場合:保管証を基に検索し、遺言情報証明書を取得します。

 

自筆証書遺言の場合は「検認」を受ける

自筆証書遺言(法務局での保管を除く)や秘密証書遺言を発見した場合は、開封せずに家庭裁判所に提出し、「検認」手続きを受けます。

 

  • 検認の目的:遺言書の状態(偽造・変造の有無)を確認し、その後の紛争を防ぐための証拠保全です。これを経ずに開封したり、手続きに使用したりすると、過料の対象となるため厳禁です。

 

  • 公正証書遺言、法務局保管の遺言は、この検認が不要です。

 

遺言執行者による手続き開始

遺言書に執行者が指定されていれば、その人が相続人の代表として手続きを始めます。

 

  • 指定がない場合:相続人全員で協議し、協力して手続きを進めるか、家庭裁判所に執行者の選任を申し立てます。

 

  • 執行者の権限:遺言執行者は、遺言書に記載された内容を忠実に実現する責任者です。執行者が選任されると、その者は相続人全員の代表として行動する権限を持ちます。これにより、預貯金の解約や不動産の名義変更など、遺産承継に関する実務的な手続きの多くを、執行者単独で進めることが可能となります。この権限により、個々の相続人の関与を求めることなく、スムーズな財産承継が実現します。

 

相続人の確定と財産目録の作成

執行者は、戸籍謄本等を取得して相続人全員を確定させるとともに、遺言書に記載されている財産以外にも隠れた財産や債務がないかを調査し、財産目録を完成させます。

 

遺言内容に基づく財産の名義変更・引き渡し

遺言執行者が中心となり、遺言書の内容に従って各財産を分配します。この際、公正証書遺言があれば、その遺言書と執行者の印鑑証明書等があれば、相続人全員の協議書や署名捺印なしで手続きが可能です。

 

相続税の申告及び納付

遺言書がある場合でも、相続人の全員が連帯して、相続開始から10か月以内に相続税の申告・納付を完了します。遺言内容が節税特例の適用に影響することがあるため、遺産の内容によっては税理士への相談が極めて重要です。

 

遺言書がある場合の相続に関する注意点

遺言書がある場合の相続に関する注意点

遺言書がある場合の相続に関する注意点を紹介します。

 

遺留分を侵害していないか確認する

遺言書によって特定の相続人に財産が集中し、他の兄弟姉妹や配偶者の遺留分(法律上最低限保障された取り分)を侵害している場合、侵害された相続人から「遺留分侵害額請求」がなされるリスクがあります。

 

対応策

後のトラブルを避けるためにも、遺言書を作成する段階で遺留分を意識し、請求されないよう付言事項で想いを伝える、あるいは弁護士などの専門家を交えて調整することが大切です。

 

遺言書があっても特例適用に共同相続人の同意が必要なケースがある

遺言書によって特定の相続人に特定の宅地を承継させた場合でも、遺産の中に特例対象宅地等が複数ある場合、税務上の手続きとして共同相続人全員による「選択同意書」の提出が必要とされることがあります。

 

例えば、特定の事業用宅地を遺言で後継者に承継させたにもかかわらず、他の特例対象宅地については相続人で等分するといった場合、他の相続人の同意が必要となり、遺言者が目指したはずの「争続回避」という目的が、税制手続きによって阻害されてしまう可能性があります。

 

対応策

特例を確実に適用するため、複数の宅地がある場合は、全ての特例対象地をそれぞれ1人の相続人に相続させるなど、税理士と連携した遺言作成が不可欠です。

 

執行者がいない場合の手続きの煩雑さ

遺言書に執行者が指定されていない場合、特に不動産の登記や預貯金の払い戻しといった手続きを進める際、相続人全員の協力が必要となり、それぞれの印鑑登録証明書や実印が、個別の金融機関や法務局で要求されることになります 。

 

これにより、複数の相続人が存在する状況では、手続きの調整や書類収集に多大な時間と労力を要し、円滑な相続手続きが阻害されるリスクがあります。

 

対応策

公正証書遺言を作成する際は、信頼できる弁護士などの専門家を執行者に指定することが、円滑な相続の鍵となります。

 

自筆証書遺言の形式不備リスク

自筆証書遺言は、日付・署名・押印のいずれかが欠けていると無効になります。形式が有効でも、筆跡鑑定が必要になったり、検認に手間取ったりするため、無効リスクのない公正証書遺言の活用が強く推奨されます。

 

争続・節税対策に効く遺言書を書く際のポイント

争続・節税対策に効く遺言書を書く際のポイント

遺言書は、単に財産を分けるだけでなく、税務上のメリットを最大化し、ご家族間の争続を予防するための戦略的文書です。

 

最も確実な公正証書遺言を活用する

公正証書遺言は、公証人という法律の専門家が関与するため、形式不備による無効リスクがありません。また、検認も不要なため、執行開始が早く、トラブル回避の観点からも最も優れた方法です。

 

税理士に相談し節税と公平性のバランスを取る

遺言内容によって、小規模宅地等の特例(自宅や事業用土地の評価額を最大80%まで減額できる制度)や配偶者の税額軽減(相続財産1億6,000万円まで相続税がかからない)といった相続税の特例が適用できるかどうかが決まります。

 

遺言書は、これらの特例を適用できる相続人に確実に財産を承継させるための「根拠」となります。税理士に相談することで、遺留分や公平性に配慮しつつ、相続税の負担が最も軽くなる内容を検討することが可能です。

 

付言事項で争続を予防する

遺言書の最後に、財産を分けた理由や、ご家族への感謝の気持ちなどを伝える付言事項を必ず加えましょう。

 

このメッセージが、相続人全員の納得感を高め、遺留分侵害額請求などの争続リスクを大幅に軽減する「最強の精神安定剤」となります。

 

定期的に内容を見直す

遺言書は書いた時点の財産と家族関係に基づいて作成されています。不動産の売却・買い替え、家族の結婚・離婚、孫の誕生などのライフイベントのタイミングで、必ず内容を見直す必要があります。

 

遺言書や相続に関するご相談ならニース税理士法人へ

遺言書がある場合の相続手続きは、一見シンプルに見えますが、遺留分の把握、検認、遺言執行、そして相続税特例の適用など、専門的な知識と実務経験が欠かせない要素が詰まっています。

 

ニース税理士法人では、税理士の専門的な視点から、

 

  • 節税対策を考慮した遺言内容の検討支援(税務専門家として財産評価・税負担シミュレーションに基づき助言)
  • 適正な財産評価と、納税を見据えた財産の分割案検討
  • 相続税の節税を最大化する申告

 

など、幅広いサービスを提供し、お客様の円満かつ有利な財産承継をサポート致します。

さらに、遺言書作成そのものについては、同じグループ法人のニースグループ行政書士法人がサポート致します。税理士と行政書士の連携により、税務と法務の両面から、お客様のご意向に沿った遺言書の作成から、その後の相続手続き、相続税申告までをワンストップでスムーズにサポートできる体制を整えています。

 

相続や遺言書についてお悩みの方は、ぜひ一度ニース税理士法人にご相談ください。私たちと一緒に、大切な財産を次の世代へ確実につなぐ最善の方法を見つけましょう。

相続税申告報酬はこちら

お問い合わせはこちら

【文責】

高瀬明彦

ニース税理士法人 シニアマネジャー

明治大学商学部卒業

2004年10月 監査法人トーマツ系列会計事務所入社

2007年3月 ニース税理士法人入社

2007年8月 税理士登録(登録番号:108496)