子から親への相続で相続税はかかる?計算方法や注意点は?
「子どもが先に亡くなり、親が財産を相続する」というケースは、親から子への一般的な相続と比べると決して多くはありません。しかし、病気や不慮の死亡などによって、深い悲しみとともに現実として起こり得る事態です。
愛する我が子を失った悲しみの真っ只中で、残されたご両親の大きな重荷となるのが、今後の手続きや税金に関する不安です。「子から親へ遺産を引き継ぐ場合でも、相続税はかかるのだろうか?」「もし税金がかかるなら、どのような計算になるのか?」このように、疑問や不安を抱え込まれる方は決して少なくありません。
本記事では、子から親へ遺産を相続する際に知っておくべき相続税の計算方法や、利用できる可能性のある控除・特例、そして申告手続きに関する注意点について、国税庁の公表情報を基に税理士が詳しく解説します。
子から親への相続が発生する主な状況
そもそも、親が子どもの遺産を相続するのは、法的にどのような状況にあてはまる場合でしょうか。
民法では、遺産を相続する権利を持つ人(法定相続人)の範囲と順位が明確に定められています。
亡くなった方(被相続人)の配偶者は常に相続人となり、それ以外の血族については以下の順位で相続人となります。
- ● 第1順位:子ども(子が亡くなっている場合は孫などの直系卑属)
- ● 第2順位:親(親が亡くなっている場合は祖父母などの直系尊属)
- ● 第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥・姪)
上位の順位の人が一人でもいる場合、下位の順位の人には相続権が回ってきません。つまり、親(第2順位)に相続権が発生するのは、「亡くなった子どもに、子や孫(第1順位)が一人もいない場合」に限られます。
具体的には、主に以下の2つのケースが考えられます。
子どもが独身で、子(孫)もいない場合
亡くなった子どもに配偶者がおらず、子どももいない場合、親が単独で法定相続人となります。ご両親とも健在の場合は、父親と母親の2人で遺産を均等(2分の1ずつ)に分け合います。
子どもに配偶者はいるが、子(孫)がいない場合
この場合、配偶者と親が共同で相続人となります。民法で定められた遺産分割の目安となる割合(法定相続分)は、配偶者が「3分の2」、親が「3分の1」となります。ご両親とも健在であれば、親の取り分である3分の1をさらに2人で分けるため、それぞれ「6分の1」ずつとなります。
【子から親への相続】相続税の計算方法
子から親への相続であっても、相続税の基本的な計算の仕組みは、通常の「親から子への相続」と変わりません。
遺産の総額が、非課税枠である「基礎控除額」を超えた場合にのみ、その超えた部分に対して相続税がかかります。
以下は国税庁ホームページの「相続税の計算」に基づく手順です。
課税のもととなる遺産額を求める
まず、相続や遺贈で取得した財産の合計額(遺産)を計算します。
- ● プラスの財産:預貯金、現金、不動産、有価証券、生命保険金(一部)、死亡退職金(一部)など
- ● マイナスの財産:借入金、未払いの税金、葬式費用など
- ● 相続開始前3年以内の贈与:相続人に対する暦年贈与は、原則として相続財産に加算されます(2024年以降の贈与については、段階的に加算期間が7年に延長されています)。
これらを「プラスの財産 - マイナスの財産 + 加算される贈与財産」の計算式にあてはめ、相続税の対象となる正味の遺産額を算出します。
基礎控除額の計算
次に、相続税がかかるかどうかのボーダーラインとなる基礎控除額を計算します。
【基礎控除額の計算式】3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
例えば、独身の子どもが亡くなり、両親2人が法定相続人となる場合、基礎控除額は「3,000万円 +(600万円 × 2人)= 4,200万円」となります。先ほど計算した正味の遺産額が4,200万円以下であれば、相続税の申告も納税も不要です。
相続税の総額と各人の税額の計算
遺産総額が基礎控除額を超える場合は、以下のステップで税額を計算します。
①課税遺産総額の算出
遺産総額から基礎控除額を差し引いた金額(課税遺産総額)を出します。
②法定相続分で分けたと仮定
課税遺産総額を、法定相続分どおりに各相続人が取得したものと仮定して振り分けます。
③相続税の総額を算出
上記②で振り分けた金額に対し、それぞれ国税庁が定める税率(10%〜55%の累進課税)を掛け、控除額を差し引いて各人の仮の税額を出します。それを全員分足し合わせたものが「相続税の総額」です。
④実際の納付税額の算出
算出した「相続税の総額」を、実際に遺産を分割した割合に応じて各相続人に割り振ります。
【計算例】遺産総額が8,200万円、両親2人が相続人の場合
- ● 基礎控除額:3,000万円 +(600万円 × 2人)= 4,200万円
- ● 課税遺産総額:8,200万円 - 4,200万円 = 4,000万円
- ● 法定相続分での仮定:父親 2,000万円、母親 2,000万円
- ● 仮の税額計算:(2,000万円以下の税率は15%、控除額50万円)
○ 父親:2,000万円 × 15% - 50万円 = 250万円
○ 母親:2,000万円 × 15% - 50万円 = 250万円 - ● 相続税の総額:250万円 + 250万円 = 500万円
もし両親が半分ずつ遺産を分けた場合、実際に納める税金は父親250万円、母親250万円となります。
※なお、兄弟姉妹が相続人となる場合には「相続税額の2割加算」という制度が適用され、算出された税額の1.2倍を納める必要がありますが、親や祖父母などの直系尊属が相続する場合には、この2割加算は適用されません。
利用できる控除・特例
相続税には、税負担を大幅に軽減できる特例や控除が設けられています。子から親への相続で活用できる可能性がある主なものを紹介します。
生命保険金・死亡退職金の非課税枠被相続人の死亡により受け取る生命保険金や死亡退職金には、それぞれ「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があります。親が受け取る場合も、この枠を利用して遺産総額から差し引くことができます。
小規模宅地等の特例亡くなった子どもが住んでいた土地などを親が相続する場合、要件を満たすと土地の評価額を最大80%減額できる強力な特例です。親が子どもと同居していた場合などに適用できる可能性があります。特例の要件の判定が難しいため、税理士等の税の専門家に確認することをおすすめします。
相次相続控除(そうじそうぞくこうじょ)今回の相続開始前「10年以内」に、亡くなった子ども自身が別の相続(祖父母からの相続など)で財産を受け取り、すでに相続税を納めていた場合に適用できます。短期間に何度も相続税が課される負担を避けるための制度です。
障害者控除相続人である親が85歳未満の障害者である場合に、障害の程度に応じた一定額が相続税額から直接差し引かれます。
子から親への相続に関する注意点
親が子どもの財産を相続する場合、通常の相続とは異なる特有のリスクが存在します。
手続きを進める上で以下の点に注意しましょう。
相続人の確認を戸籍で正確に行う
子から親への相続では、相続人の範囲を確定させる作業が特に重要です。被相続人に、認知した子や養子、離婚した前配偶者との間の子がいる場合、その子が第1順位の相続人になり、親は相続人になれません。必ず被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を集め、相続人を漏れなく確認しましょう。
財産の全体像の把握が難しい
子が親より先に亡くなると、親は子の財産状況をよく知らないことがあります。通帳、証券口座、保険証券、不動産の権利証、借入金の契約書などを丁寧に探し、財産の全体像を把握しましょう。
近年はネット銀行やネット証券、暗号資産などを利用する方も多く、これらは紙の明細が届かないため見落としやすくなります。特に注意して確認が必要です。
「二次相続」を見据えた慎重な判断が必要
親が子どもの財産を相続したあと、そう遠くない将来に親自身が亡くなり、今度は親から他の親族(亡くなった子どもの兄弟姉妹など)へと財産が引き継がれる相続が発生する可能性が高くなります。これを「二次相続」と呼びます。
子どもの財産が加わることで親自身の遺産総額が膨れ上がり、結果として二次相続の際に多額の相続税が課されるリスクが生じます。そのため、あえて親は相続放棄を選択し、最初から他の兄弟姉妹に財産を相続させるなど、次の相続まで見据えた大局的な判断が求められます。
過去の生前贈与の見落としに注意
計算方法の項目でも触れた通り、亡くなる前に子どもから親へ贈与が行われていた場合、一定期間内の贈与は相続財産に持ち戻して計算する必要があります。
2024年以降、この加算期間が「3年」から段階的に「7年」へと延長されているため、過去の通帳履歴などをより慎重にさかのぼって確認しなければなりません。
申告・納税の期限は「10ヶ月」
相続税の申告と納税の期限は、「被相続人(子ども)の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内」と厳格に定められています。期限を過ぎてしまうと、特例が使えなくなる恐れがあるほか、無申告加算税や延滞税といったペナルティが発生してしまいます。
相続税や各種手続きに関するご相談なら
子から親への相続は、お子様を亡くされた精神的な負担が計り知れない中で、期限の迫る複雑な税金や法律の手続きを進めなければならないという、非常に困難な状況を伴います。
特に、不動産が含まれている場合や、将来の「二次相続」を見据えた遺産分割が必要な場合は、ご自身だけで判断して進めると後々思わぬ不利益を被るリスクがあります。
相続税の計算、特例が適用できるかどうかの判断、そして煩雑な手続き全般でお悩みの方は、決して一人で抱え込まず、専門家へご相談ください。
ニース税理士法人では、ご遺族の深い悲しみとお気持ちに寄り添いながら、適切かつ確実な税務申告を丁寧にサポートいたします。複雑な「二次相続」を含めた税額シミュレーションや、不動産の適正な評価額算出など、確かな知識と豊富な実績に基づき、ご家族にとって最適な解決策をご提案いたします。
さらに、併設するニースグループ行政書士法人が連携することで、税務申告にとどまらないトータルサポートが可能です。ご負担の大きい戸籍謄本等の収集から、遺産分割協議書の作成、金融機関での名義変更や解約手続きに至るまで、窓口を一つ(ワンストップ)にしてお任せいただけます。
初回のご相談は無料でお受けしております。「まだ何も手をつけられていない」「そもそも税金がかかるか分からない」という段階でも構いません。お電話やメール、オンラインにて、まずはお気軽にご連絡ください。
(参考:国税庁ホームページ「相続税の仕組み」「No.4152 相続税の計算」等の情報を基に作成)
参考:国税庁ホームページ「相続税の仕組み」「No.4152 相続税の計算」
【文責】
高瀬明彦
ニース税理士法人 シニアマネジャー
明治大学商学部卒業
2004年10月 監査法人トーマツ系列会計事務所入社
2007年3月 ニース税理士法人入社
2007年8月 税理士登録(登録番号:108496)
