【マンションの相続】基本的な流れや注意点を解説
親族が亡くなり、遺産の中にマンションなどの不動産が含まれているケースは非常に多く見られます。近年では、都市部を中心にマンションを所有する方が増えており、それに伴ってマンションの相続に関するご相談も増加傾向にあります。
現金や預貯金の相続とは異なり、マンションの相続は「物理的に半分に分ける」といったことが困難です。そのため、どのように公平に分けるのか、名義変更の手続きはどうするのか、そして相続税の計算はどのように行うのかなど、専門的な手続きや判断が多数発生します。
「誰がマンションを引き継いで住むのか」「誰も住まないなら売却するのか」「それとも賃貸に出して収益化するのか」など、ご家族の状況や将来のライフプランによって最適な方法は異なります。対応を後回しにすると、後々大きな親族間のトラブルに発展したり、不要な税金を支払うことになったり、マンションが「マイナスの資産」として重荷になってしまう可能性もあります。
本記事では、マンションを相続する際の基本的な流れや、事前に必ず知っておくべき注意点について、順を追ってわかりやすく解説します。
マンションを相続する際の基本的な流れ
マンションなどの不動産を含む遺産を相続する場合の手続きは一般的に以下のステップで進めていきます。
期限が定められているものや、法改正により義務化された手続きもあるため、全体像を把握してスムーズに行動することが大切です。
1. 遺言書の有無を確認する
相続が発生(被相続人が死亡)したら、何よりも先に行うべきは故人が「遺言書」を残していないかの確認です。遺言書が存在する場合、原則としてその内容が最優先されます。
法定相続分よりも故人の意思が尊重されるため、誰がマンションを引き継ぐかをめぐる親族間での遺産分割協議を省略でき、相続トラブルの防止に大きく役立ちます。
遺言書の保管場所を確認する
遺言書は自宅にあるとは限りません。公証役場で作成された「公正証書遺言」や、法務局で保管される「自筆証書遺言書保管制度」を利用している場合は、それぞれの機関で遺言書の有無を検索・確認できるシステムが整っています。
ご自宅で見つからなかった場合でも、相続人であれば被相続人の戸籍謄本や身分証明書などを提示することで、全国の窓口で照会を行うことができます。
自筆証書遺言を見つけても勝手に開封しない
自宅の金庫や仏壇などから、封のされた「自筆証書遺言」が見つかった場合は、決してその場で勝手に開封してはいけません。偽造や変造を防ぐため、家庭裁判所に持ち込んで相続人立ち会いのもとで開封する「検認(けんにん)」という法的手続きを経る必要があります。
もし検認を経ずに開封してしまった場合、直ちに遺言が無効になるわけではありませんが、民法の規定により「5万円以下の過料」という罰則が科される可能性があります。それ以上に深刻なのは、「自分に都合よく中身をすり替えたのではないか」と他の親族から疑われ、泥沼の相続争いに発展する最大の引き金になりかねない点です。
誤って開封してしまった場合はどうなる?
開封してしまった後であっても、マンションの相続登記(名義変更)や金融機関の口座解約手続きには、結局のところ裁判所が発行する「検認済証明書」が必要になります。封のされた遺言書を発見した場合は、絶対に開封せず、そのままの状態で速やかに家庭裁判所へ提出しましょう。
2. 法定相続人と遺産全体を確定する
遺言書がない場合は、民法で定められた「法定相続人」が誰になるのかを確定させます。被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を取り寄せ、相続関係を正確に把握しなければなりません。同時に、遺産全体を調査します。
マンションなどの不動産だけでなく、預貯金、有価証券、自動車といったプラスの財産に加え、借金や未払いの税金、ローンなどのマイナスの財産もすべて洗い出します。マンションについては、この段階で固定資産税評価額などを確認し、大まかな評価額を算出して相続税申告が必要かどうかの目安をつけておきます。
3. 遺産分割協議を行い、取得方法を決定する
相続人と遺産が確定したら、法定相続人全員で「誰が・どの財産を・どのくらい引き継ぐか」を話し合う「遺産分割協議」を行います。マンションの分け方(取得の方法)には、主に以下の3つの代表的な方法があります。
●現物分割:特定の1人がマンションをそのままの形で取得する方法
(例:同居していた配偶者や長男がそのままマンションを相続する)
●代償分割:特定の1人がマンションを取得する代わりに、他の相続人に対して代償として現金を支払う方法
(例:長男がマンションを相続し、次男・三男に対して相応の現金を支払う)
●換価分割:マンションを売却して現金化し、その売却代金から諸経費を差し引いた残りの現金を相続人で分ける方法
(例:誰もマンションに住む予定がないため売却して現金で等分する)
全員が合意し、協議がまとまったら「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員の署名と実印の押印(印鑑証明書の添付)を行います。
4. 法務局で相続登記(名義変更)を行う
マンションを相続する人、あるいは売却する方針が決まったら、マンションを管轄する法務局で「相続登記」を行い、所有者の名義を被相続人から新しい取得者へ変更します。注意すべき点として、2024年4月1日より相続登記が義務化されました。
不動産の取得を知った日から3年以内に正当な理由なく登記手続きを怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。登記の手続きには、登録免許税(原則:固定資産税評価額の0.4%)という税金や、住民票などの書類取得費用がかかります。
5. 相続税の申告・納付手続きを行う
遺産の総額が、相続税の「基礎控除額」を超える場合は、税務署への申告と納税が必要です。基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算されます。
この金額を超えた場合、相続開始を知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10ヶ月以内に、相続税の申告・納付を行わなければなりません。期限を1日でも過ぎると「延滞税」や「無申告加算税」といったペナルティが課されるため、余裕を持った準備が必要です。
マンションを相続する際の注意点
マンションの相続には、現金や預貯金にはない特有の難しさや落とし穴があります。ここでは、特に気をつけたい重要な注意点を4つ解説します。
1. マンション特有の財産評価ルールの複雑さに注意
相続税計算のベースとなる財産の「評価」ですが、マンションの場合は非常に複雑です。一戸建てとは異なり「敷地権(土地の持ち分)」と「専有部分(建物)」に分けて計算を行います。また、市場での売買価格(時価)と相続税評価額の大きな乖離を利用した行き過ぎた節税(いわゆるタワマン節税)を防ぐため、2024年1月よりマンションの相続税評価ルールが改正されました。
築年数や総階数、所在階数などから算出される「乖離率」を用いて評価額を補正する新ルールが導入されており、税制に関する最新の専門知識がないと正確な算出が極めて困難になっています。
2. 兄弟間などでの「共有名義」は将来のトラブルの原因に
「遺産がマンションしかなく、平等に分けるために兄弟3人の共有名義にしよう」といった安易な判断は、極力避けるべきです。マンションを共有名義にしてしまうと、将来そのマンションを売却したり、大規模なリフォームをする際に、共有者全員の同意が必要になります。
誰か一人でも反対すれば売却やリフォームはできません。さらに、共有者の誰かが亡くなって次の相続(二次相続)が発生すると、権利を持つ人がネズミ算式に増えていき、もはや誰の同意を得ればいいのかすら分からなくなる「権利の細分化」が起きます。将来の世代へ大きな負の遺産を残すことになるため注意が必要です。
3. 売却時にも相続登記が必須。譲渡所得税などの費用も考慮する
誰も住む予定がなく「換価分割」で売却を選択する場合でも、被相続人の名義のままでは第三者に売ることはできません。必ず一度、相続人の名義へ「相続登記」を完了させる必要があります。
また、売却活動には不動産会社への仲介手数料がかかるほか、マンションを売って利益(譲渡益)が出た場合には「譲渡所得税」や「住民税」がかかる可能性があります。
ただし、相続税を支払っている場合は「取得費加算の特例」を用いて税負担を軽減できるケースもあるため、売却代金がすべて手元に残るわけではない点と併せて、税務上の特例をしっかり確認することが重要です。
4. 住宅ローンや「管理費・修繕積立金」の負担を確認する
被相続人がマンションの住宅ローンをまだ返済中だった場合、金融機関の「団体信用生命保険(団信)」に加入していたかどうかをすぐに確認しましょう。団信に加入していれば、死亡保険金でローンの残額が全額相殺されるため、相続人がローンを引き継ぐ必要はありません。もし未加入だった場合は、マイナスの遺産として借入金も相続することになります。
さらに、マンション特有の注意点として「管理費」と「修繕積立金」があります。これらは、マンションに誰も住んでいなくても(空室であっても)、所有している限り毎月必ず支払い続けなければなりません。売却先が決まるまでの間、このランニングコストを誰が負担するのかも、相続人間で決めておく必要があります。
マンションを相続する際には専門家へご相談を
ここまで解説したように、マンションの相続は、遺言書の確認から始まり、誰が引き継ぐかの協議、法改正に対応した複雑な財産評価、義務化された法務局での登記手続き、そして期限内での税務署への申告まで、非常に多岐にわたる専門的なステップを限られた時間内にミスなく進める必要があります。
少しでも判断や手続きを間違えると、親族間で取り返しのつかないトラブルに発展したり、本来であれば活用できたはずの税制優遇(小規模宅地等の特例など)を受け損ねて多額の相続税を支払うリスクがあります。
ニース税理士法人では、最新の税制に基づいたマンションの複雑な相続税評価や申告手続きはもちろん、ご家族の状況や将来のライフプランに合わせた、最も有利でトラブルのない遺産分割のシミュレーションまで、相続専門の税理士がチームで丁寧にサポート致します。
さらに、当グループにはニースグループ行政書士法人を併設しております。相続手続きにおいて最初の大きな負担となる「戸籍謄本等の収集(相続人の確定)」から、親族間の大切な合意を法的に形にする「遺産分割協議書の作成」といった煩雑な書類作成も、グループ内でスピーディーかつシームレスに対応が可能です。
そのうえで、司法書士や不動産鑑定士などの専門家ネットワークとも強固に連携しているため、法務局での面倒な相続登記から、不要になった不動産の売却(換価分割)のサポートまで、お客様の手間やご負担を極限まで減らす完全ワンストップ体制を整えております。
「マンションを相続したが、何から手をつけていいか全くわからない」「新しい評価ルールで相続税がどうなるのか不安だ」「兄弟間でどう分けるべきか迷っている」という方は、一人で悩まず、まずはお気軽にニース税理士法人までご相談ください。お客様のお悩みに寄り添い、最適な解決策をご提案いたします。
【文責】
高瀬明彦
ニース税理士法人 シニアマネジャー
明治大学商学部卒業
2004年10月 監査法人トーマツ系列会計事務所入社
2007年3月 ニース税理士法人入社
2007年8月 税理士登録(登録番号:108496)
