相続税申告を税理士に依頼するメリットって?頼まないデメリットについても
ご家族が亡くなられ、深い悲しみと喪失感のなかで直面するのが「相続」という現実的な問題です。葬儀や法要に追われる中で、年金の手続き、預貯金の解約、不動産の名義変更まで、息をつく暇もなく様々な手続きが押し寄せてきます。
中でも「相続税の申告」は、多くの方にとって一生に一度か二度しか経験しない、極めて専門的で難しい手続きと認識している一方、「税理士に頼むと費用がかかるから、自分で申告できないだろうか?」「そもそも専門家に依頼するだけの価値やメリットがあるのだろうか?」と迷われる方も少なくありません。
結論から申し上げますと、相続税申告は税理士に依頼することを強くおすすめします。なぜなら、相続税は「誰が計算しても同じ金額(結果)になる」税金ではなく、税理士の専門知識やノウハウの有無によって、最終的に納める税額が数百万円、時には数千万円単位で大きく変わるからです。
本記事では、「相続税申告を税理士に依頼する具体的なメリット」や「自分で申告する(税理士に頼まない)ことで生じるデメリット」について、わかりやすく解説します。
目次
相続税申告の基礎知識
そもそも相続税とは、亡くなった方(被相続人)から遺産を受け継いだ際に、その遺産総額に対して課せられる税金です。しかし、ご家族が亡くなったからといって、必ずしも全ての人が申告・納税をしなければならないわけではありません。
相続税の制度には「基礎控除」と呼ばれる非課税枠が設けられています。
【基礎控除額】= 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
預貯金や有価証券、不動産などをすべて合算した遺産総額が、この基礎控除額を上回る場合にのみ、相続税の申告と納税の義務が発生します。なお、生命保険の死亡保険金や死亡退職金なども「みなし相続財産」として課税の対象に含まれる点には注意が必要です。
申告の期限は「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内」と法律で厳格に定められており、この期限内に被相続人の住所地を管轄する税務署へ、正確に計算された申告書を提出し、納税まで完了させなければなりません。
「10ヶ月」と聞くと長く感じるかもしれませんが、実際には以下のようなステップを積み上げる必要があります。
- 1.相続人の確定(生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本の収集)
- 2.相続財産の調査と評価(預金残高の確認や不動産の価値の算定)
- 3.遺産分割協議(誰が何を相続するかの話し合い)
- 4.申告書の作成と納税(被相続人の住所地の所轄税務署へ)
これらを漏れなく行うには膨大な時間がかかります。期限を1日でも過ぎてしまうと「延滞税」や「無申告加算税」といった重いペナルティ(罰金)が課されるため、迅速かつ正確な対応が求められるのです。
相続税申告を税理士に依頼するメリット
相続税の申告は、法律上ご自身で行うことも可能です。しかし、実務においては多くの方が専門家に頼っています。
ここでは、費用を支払ってでも税理士に依頼することで得られる、具体的な4つのメリットを詳しく解説します。
申告書類の作成・手続きの負担を軽減できる
第一のメリットは、時間と労力の節約です。相続税の申告には、信じられないほど膨大な数の書類を収集し、作成する必要があります。
例えば「戸籍謄本」一つをとっても、現在のものだけでなく、被相続人の出生から死亡まで途切れることなく連続したものを全て揃えなければなりません。本籍地を何度も移していた場合、全国の自治体に郵送請求を行う必要があり、これだけでも数週間から1ヶ月を要します。
さらに、被相続人の金融機関の残高証明書や過去の取引明細、不動産の登記事項証明書や公図並びに全ての相続人の印鑑証明書といった平日の日中に役所や金融機関、法務局を何度も往復しなければ揃わないものが大半です。
かき集めた資料をもとに税法に則った複雑な計算を行い、数十ページにも及ぶ申告書を作成する作業は、税務の知識がない方にとっては非常に困難です。税理士に依頼すれば、こうした煩雑な手続きの大部分を代行及びサポートしてもらえるため、ご遺族は心身の負担を大幅に軽減し、故人を静かに偲ぶ時間を取り戻すことができます。
特例・控除の適用漏れを防げる
相続税には、残されたご家族のその後の生活を守るため、税負担を大幅に軽減できる様々な「特例」や「控除」が用意されています。
配偶者の税額軽減
配偶者が遺産を相続した場合、最低でも1億6,000万円までは非課税となる強力な制度。
小規模宅地等の特例
亡くなった方の自宅の敷地や事業用の土地を一定の親族が相続した場合、その土地の評価額を最大80%も減額できる制度。
しかし、これらの特例は「条件を満たしていれば自動的に適用される」ものではありません。要件を厳密に判定し、期限内に特例を適用した正しい申告書を税務署に提出して初めて効果を発揮します。要件の解釈は非常に複雑で、「同居していたか」「相続後もその家に住み続けるか」など、細かな事実関係の確認が不可欠です。
さらに、将来発生するであろう配偶者の相続(二次相続)まで見据えて、「今回の一次相続で誰がどの財産を、どの特例を使って相続するのが、トータルで見て最も節税になるか」というシミュレーションは、一般の方には不可能です。税理士が介入することで、特例を漏れなく最大限に活用し、合法的に税額を最小限に抑える戦略を立てることが可能になります。
正確な財産評価が受けられる
相続税申告において最も難易度が高く、税理士の実力差が如実に表れるのが財産の「評価」です。 現金や預貯金は額面通りの評価ですが、不動産の評価は非常に奥が深く、計算する人によって評価額が大きく変動します。
土地の評価は、原則として国税庁が定める「路線価」をベースに行いますが、現実の土地は綺麗な真四角ばかりではありません。形がいびつな土地(不整形地)、道路に接している部分が狭い土地、傾斜がある土地、周辺に墓地や騒音などの嫌悪施設がある土地など、それぞれの個別事情を考慮して「減額補正」を行うことが認められています。
相続税に精通した税理士は、机上の計算だけで済ませず、必ず現地調査や役所での綿密な調査(都市計画法や建築基準法の制限の確認など)を行い、評価を下げる要因(減額要素)を一つひとつ論理的に見つけ出します。これにより、財産評価を適正な水準まで引き下げ、その結果として納める相続税を減らすことができるのです。
税務調査のリスクを軽減できる
相続税は、法人税や所得税など他の税金に比べて、圧倒的に税務調査が入りやすいという特徴があります。国税庁の統計によると、例年申告件数の約10〜20%に対して実地調査が入り、調査が入った場合の追徴課税(罰金を含めた追加の税金)の発生率は実に80%を超えています。
更に注意すべきなのは、システムの刷新により、今後の税務調査は今まで以上に厳しくなるという点です。国税庁は課税・徴収の効率化や高度化を目指し、令和8年(2026年)9月より次世代の国税総合管理システム「KSK2」へ切り替えることとしています。
この新システムにより、税務調査の手法は下記のように変化します。
紙からデータへ(AIによる調査選定)
これまで紙だった書類もすべてAI-OCR(光学的文字認識)によってデータ化され、AI分析の対象となります。全国レベルでデータが比較されるため、規模にかかわらず統計上の異常値がある納税者は、AIによって的確に調査対象として選ばれやすくなります。
縦割りの解消(税目横断の一元管理)
所得税・法人税・相続税・贈与税などの各データが統合・一元管理されます。亡くなった方が会社経営者であった場合など、法人と代表者個人、そしてそのご親族の税務情報を横断的に把握できるため、部門の垣根を越えた「多税目の総合調査」が増加する可能性があります。
リアルタイムな情報アクセス
調査官が調査現場から国税のシステムに直接アクセスできるようになります。現場にいながら他社の情報等へ即座にアクセスできるため、今まで以上に反面調査が容易になり、「では、署に持ち帰って確認します」といったタイムラグのないスピーディーかつ逃げ場のない調査が行われます。
ご自身で申告書を作成した場合、ルールの誤認による計算ミスや悪意のない財産の計上漏れが起こりやすく、こうした高度なAIシステムに「調査対象」として目をつけられるリスクが格段に高まります。
しかし、税理士に依頼し、税理士法第33条の2に基づく「書面添付制度」を活用することで状況は一変します。これは「税理士がこの申告書の内容は適正であると保証し、計算の根拠を詳しく記載した書面を添付する制度」です。これにより税務署からの信頼度が格段に上がり、税務調査に選ばれるリスクを大きく下げることができます。
万が一調査が入ることになっても、税理士が事前に意見聴取に応じたり、当日の調査に立ち会って論理的に交渉を代行したりするため、非常に心強い盾となります。
相続税申告を税理士に頼まないデメリット
一方で、税理士費用を節約しようと、ご自身で相続税申告を行った場合にはどのようなデメリットや危険性が潜んでいるのでしょうか。
本来払わなくてよい税金を払ってしまう(過大申告)リスク
前述した特例の適用漏れや、土地の評価において減額できるポイントを見落としたまま、高い評価額で申告してしまうケースです。恐ろしいのは、税金を払いすぎたとしても、税務署から「計算が間違っていて払いすぎていますよ。お返ししますね」と親切に教えてもらえることは絶対にないという点です。
数十万円の税理士報酬を節約したつもりが、結果的に数百万円も余分に税金を納めてしまい大損するケースは後を絶ちません。
名義預金などによる申告漏れと重いペナルティ
税務調査で最も指摘されやすいのが「名義預金」です。これは、口座の名義が配偶者や子ども、孫であっても、実質的な資金の拠出者や管理者が亡くなった方であった場合、「被相続人の財産」として相続税の対象になるというものです。
一般の方は「名義が違うから関係ない」と思い込み申告から除外してしまいがちですが、後日税務調査で指摘されると、「延滞税」や「過少申告加算税」、場合によっては「重加算税」といった多額のペナルティを支払う羽目になります。
時間的損失と精神的ストレス
悲しみの中、見慣れない専門用語や税法を基礎からゼロベースで調べ、平日に役所を回り、複雑な申告書と格闘することは、想像を絶するストレスです。
仕事や育児、介護などを抱えている方にとって、日常生活を犠牲にしてまで不確実な手続きに時間を奪われることは、最大のデメリットと言えるかもしれません。
相続税に関するご相談なら
これまで基礎から順を追って見てきたように、相続税申告を税理士に依頼することは、単に「面倒な手続きを外注する」という次元の話ではありません。
特例の確実な適用や、論理的な根拠に基づいた徹底した土地評価による「最大限の節税効果」を生み出し、税務調査の不安から解放される「確かな安心感」を得るための、非常にリターンの大きい投資と言えます。多くの場合、税理士に支払う報酬額を上回る節税効果や、目に見えない安心というメリットを享受できるはずです。
ニース税理士法人では、これまで数多くの相続税申告をサポートしてまいりました。 不動産の複雑な評価による適正な節税対策や、二次相続までを俯瞰した最適な遺産分割のシミュレーションなど、相続税に特化した豊富な実績と専門ノウハウを有しております。
また、当グループにはニースグループ行政書士法人も併設しております。そのため、役所や金融機関での「戸籍謄本の収集」や「預金口座の解約・名義変更」、「遺産分割協議書の作成」といった面倒な行政手続きから、最終的な相続税の申告まで、窓口を一つにしてワンストップでスムーズに対応できるのが大きな強みです。
「自分の場合はそもそも申告が必要なのか?」「税金は概算でいくらくらいになりそうか?」「名義預金とみなされないか心配だ」といった初期段階の疑問から、遺産分割のアドバイス、煩雑な書類の収集サポート、そして税務署への申告手続きまで、ご遺族の皆様の心に寄り添いながらトータルでサポート致します。
お客様お一人おひとりのご事情に合わせた最適なプランを、道筋を立ててわかりやすい言葉で丁寧にご提案させていただきます。相続税のことで少しでも不安や疑問をお持ちの方は、一人で悩まず、ぜひ一度ニース税理士法人までお気軽にご相談ください。あなたの最良のパートナーとして、円滑な相続手続きを全力でバックアップ致します。
【文責】
高瀬明彦
ニース税理士法人 シニアマネジャー
明治大学商学部卒業
2004年10月 監査法人トーマツ系列会計事務所入社
2007年3月 ニース税理士法人入社
2007年8月 税理士登録(登録番号:108496)
